法人化で相続税の控除など節税対策を活用する方法

個人事業を営んでいる人は相続が関係した場合の時を考えて、法人化すると税制面でいくつかメリットがあります。

法人の税制面でのメリット

個人事業主の場合には、売上から必要経費分を引いた年間所得に応じた税率で次のとおり所得税が課税されます。

・年間所得195万円以下 税率5%
・年間所得195万円超~330万円以下 税率10%
・年間所得330万円超~695万円以下 税率20%
・年間所得695万円超~900万円以下 税率23%
・年間所得900万円超~1800円以下 税率33%
・年間所得1800万円超 税率40%

法人の場合には、年間の事業所得に対する法人税が課税されますが、年間所得800万円以下なら税率22%、800万円超では税率30%になります。

そのため個人事業主の場合で年間所得900万円超の場合には、法人化したほうが税率を下げることができます。

消費税についても、資本金1,000万円未満の法人であれば会社設立後2事業年度は免税されます。

法人だと損失を繰り越せる年数も長くなる

個人が青色で確定申告を行った場合、発生した損失の繰越は最長3年までです。

しかし法人の場合で青色申告書を提出した場合には、繰越欠損金が9年まで認められています。さらに平成27年度の税制改正で、平成29年4月1日以後に開始する事業年度においての欠損金額の繰越期間は10年に延長されています。

法人だと経費の範囲が拡大される

個人事業主は自分の給料としてのお金を経費にすることはできません。しかし法人は役員報酬など経費として認められています。さらに役員の給与に対して給与所得控除があります。

そして法人は生命保険の種類によって保険料を損金に計上できるというメリットがあります。

個人のまま相続した場合

個人事業主のまま亡くなった場合、事業用の資産は全て相続財産になります。そうなると相続税が増えることになりますし、複数相続人がいる場合には相続財産を分配する必要が出た場合事業の存続は難しくなるでしょう。

さらに個人の金融機関口座は凍結されますので、遺産分割協議が行われるなどの後にお金を引き出すことになります。

・なら生きているうちに継承すれば安心?

亡くなってからでは相続でややこしくなるので、生きているうちに事業を子供などへ継承すれば問題ないというわけでもありません。

生前贈与となるため今度は贈与税が課税されます。相続税よりも贈与税のほうが税率も高くなるなどデメリット部分が発生します。

法人で相続した場合

事業の資産や資金を引き継ぐのは法人になりますし、生前に子供などが事業を引き継ぐ場合も贈与税の対象外です。法人のほうが事業の引き継ぎがスムーズに行えるという特徴があります。

そして相続財産は少しでも少ないほうが相続税を節税することができるのですが、従業員に家族を迎え入れて給与を払えば必要経費で処理が可能です。贈与税や相続税を発生させることなく、財産を渡すとことが可能になるとも考えられます。

相続対策に生命保険を活用する

法人契約で生命保険に加入した場合には、保険の種類によって可能な割合は違いますが保険料を損金計上できます。

使い道としては、死亡保険金、退職金代わり、修繕費など様々なですが、経費になるので税金面でメリットがあると言えるでしょう。

生命保険を活用するメリット

法人の経営者は自社株の相続税評価額が高くなることで財産のほとんどが自社株のこともあります。しかし自社株は換金できませんので、相続税納付のために現金を確保する必要性が高まります。この場合、法人で生命保険を契約すると様々な部分でメリットがあります。

・死亡退職金の準備に

経営者が在職している間に亡くなった場合には、死亡退職となるため会社からは退職金が支給される場合があります。

経営者に支給する退職手当金や功労金を受け取るのは遺族ですので、経営者の死亡後3年以内に支給が確定したものは相続財産とみなされ相続税の課税対象です。

そのため退職手当金の場合には、遺族の生活保障として法定相続人1人あたり500万円が非課税部分が設けられています。

・弔慰金の準備として

経営者が亡くなった場合、遺族に対して弔慰金を支給することもあるでしょう。遺族が受け取った弔慰金は相続税の対象ではありませんが、亡くなった理由が業務の上でのことであれば給与の3年分、それ以外は給与の6か月分までが対象外です。

この金額を超える場合には退職金として相続税が課税されます。

・死亡保険金の非課税を確保できる

契約者が法人で被保険者が経営者の生命保険で、経営者が亡くなった場合には死亡保険金は会社に支払われます。そのため退職金としての支払いに充てることが可能です。

経営者が生きて無事退職を迎えた場合には、保険の契約者を法人から経営者に変更し、契約自体を退職金代わりとして渡すことも可能です。

経営者が亡くなった時には生命保険金が支払われますが、生命保険金の非課税部分を利用することができます。

・自社株評価を下げることができる

自社株の相続税評価額を計算する際には、類似業種比準価額を使って行います。類似業種の株価、そして自社の純資産、利益、配当金で株価が計算されますが、株価の評価に大きく影響するのは利益部分です。

そのため損金計上可能な生命保険に加入すれば利益部分の引き下げになります。ただし自社株評価を行う際に使う利益金額は、直前期末1年間の利益のため、株価評価の引き下げとして効果が出るのは保険料を支払った翌期以降であることに注意しておきましょう。

生命保険が自社株評価に与える影響

経営者が亡くなった時の相続税を節税するためには自社株への対策を行う必要があります。所有株式数を減らせば自動的に相続税も減ることになるでしょうが、株は議決権があるので生前贈与で移動させると株を後継者に集中させることができなくなるかもしれません。

それならと利益を減らすために現金を無駄に使ったり、不動産など購入したりと、しかし事業に意味のない買い物は最善策とは言えないでしょう。

自社株対策前に相続が発生した場合

これから対策を行おうと思っていたのに間に合わず、配偶者が自社株の大半を相続すれば配偶者の税額軽減を使うことができます。その間に時間稼ぎをして自社株対策を行なうようにしましょう。

・死亡退職金の支給
退職金を支給して利益金額を減少させ、翌期の株価評価を下げます。

・配当の引き下げ
配当金額については直前2期分の平均を使いますが、配当金を下げるだけでも自社株評価は下がります。ただし効果が反映されるのは翌期からです。

・含み損を出す
資産に不動産や株、ゴルフ会員権といった含み損を抱えるものがある場合には、売却して含み損を確定させれば株価を引き下げる効果を得ることができます。

結局相続財産にカウントされる場合もある

自社株対策を行った後で、相続を受けた配偶者から今度は子供へ生前贈与を行えば相続税の節税対策になります。

ただし配偶者から子供へ自社株を生前贈与したのち3年以内に配偶者が亡くなった場合には、自社株は配偶者から子供に対する相続財産に含められることになります。

相続財産に含められるものは贈与時点の金額ですので、株価が贈与後に上昇してもその分は考慮されません。そのため相続時精算課税制度を利用することで自社株を贈与したほうが有利な場合もあります。

・相続時精算課税制度とは

原則、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に財産を贈与した場合の贈与税の制度です。2,500万円まで非課税で贈与が可能で、生前贈与を行った人が亡くなった時に贈与財産の贈与時価額と相続財産価額の合計金額を基にして相続税額を計算します。納めた贈与税相当額を控除して贈与税と相続税を通じて納税を行うというものです。

最適な税対策の検討を

会社の経営者が亡くなった場合に発生する相続に関しては、余分な税金を払わなくても良いように節税対策を行っておく必要があります。ただしケースバイケースでどの選択方法が良いかは異なるため、状況に合った方法を選ぶようにしましょう。