節税対策から退職金準備まで。逓増定期保険とは

もしあなたが法人のオーナーであれば、節税対策は非常に重要な経営問題。法人減税があったにせよ、いまだに我が国の法人実行税率は高額です。事業法人が、法に則り節税対策を行うには、事業保険に加入するしかありません。これまでの事業保険契約におけるトレンドは全損タイプの事業保険。支払い保険料の全額を損金に算入し、課税対象額を大幅に圧縮する保険です。

しかし、ここもとの法改正により、全損タイプの保険ラインナップは激減しました。全損タイプの主力であった法人がん保険も法改正の煽りを受け、全損タイプが撤廃。以後、ますます逓増定期保険のニーズが高まってきています。では、逓増定期保険とは一体どのような保険なのでしょうか。その基礎知識と代表的な利用例を皆様とシェアしたいと思います。

【逓増定期保険とは何か。その基礎知識を確認。】

逓増定期保険とは、主に中小企業において、その役員の保障や法人の節税対策に利用される事業保険のことです。保険金額が保険期間の経過とともに増加し、その死亡保険金の受取額は最大で当初の5倍まで跳ね上がります。経営者に万が一のことが起こった際の保障は盤石と言えるでしょう。

しかし、基本的に、事業保険は中途解約を前提に加入するケースがほとんどです。支払い保険料を損金計上しながら、効率よくキャッシュを積み立てて行きます。この積立金を将来、解約返戻金として受け取り、退職金などと損益通算するのです。活用方法の具体例は後述しますが、このようにして課税対象額を圧縮します。それにより、法人税の支払いを減少させるのです。

逓増定期保険における損金算入割合は支払い保険料の半額が一般的。3分の1損金タイプや、4分の1損金タイプ等もありますが、半損タイプが最もポピュラーと言えるでしょう。また、支払い保険料が高額なため、全損保険ならずとも、入口部分でかなりの節税効果が見込めます。

しかし、逓増定期保険における最大の特徴は、短期間で効率よく資金作りができることと言えるでしょう。返戻率のピークを保険加入の5年後から10年後に控え、返戻率のピークを迎えるまでの期間が非常に短いことが特徴です。上述したように、保険料が割高なため、急な業績悪化時には赤字計上リスクが伴います。

契約に際しては、最低でも保険料の支払い期間は安定的に利益を出し続ける必要があるのです。そもそも利益が上がっていない法人では、保険に加入するメリットがなくなってしまいます。まとめると、支払い保険料の半額を損金に算入し、効率よくキャッシュを積み立てられる保険。それが逓増定期保険なのです。

【逓増定期保険への加入が有効なケースは?その具体例を確認。】

では、具体的にはどのようなケースで逓増定期保険を利用することが適しているのでしょうか。ここからはその具体例について考えていきたいと思います。上述したように、逓増定期保険における解約返戻金返戻率のピークは保険加入時から5年から10年後。加入から返戻率がピークを迎えるまでのスパンが短いことが特徴です。

よって、経営者の勇退時期や事業承継の時期がピンポイントで定まっている場合に非常に有効な保険と言えます。事業保険においては解約返戻金の受け取り方が非常に重要。解約返戻金を単純受け取りしてしまえば、その全額が益金算入されますが、経営者の退職金として受け取ることで損金算入可能。両者を損益通算することで、課税対象額を減らします。即ち、支払い法人税も減るということです。

よって、近い将来に経営者の勇退が控えている場合には、その退職金準備として、逓増定期保険契約を加入することは非常に有効と言えるのです。また、近い将来に設備投資を控えている場合も同様です。その資金準備に逓増定期保険を利用することができます。例えば、寺院における修繕費等。事業法人のみならず、宗教法人でも事業保険に加入可能です。

解約返戻金のピーク時と修繕費が必要なタイミングを合わせることで両者の損益通算が可能。法人税の課税対象額が減ることで、支払い法人税も軽減出来ます。企業経営者にとっては非常にゆゆしき問題である、事業承継についてもこちらの保険で対応出来ます。事業承継においては自社株評価がキーポイント。会社の規模にはとらわれず、継続的に利益を上げ続けている企業は要注意です。

内部留保が豊富な優良企業は、その株価も高くなることが想定されます。逓増定期保険の高額な支払い保険料を損金に算入することで、法人の利益を圧縮することが出来ます。帳簿上の利益を意図的に少なくして、課税対象を軽減するのです。

そうすることで、後継者の税負担を軽減することが出来るのです。蛇足ですが、逓増定期保険には審査不要の契約者貸し付け制度があります。借り入れ時点での解約返戻金の約90%程度をメドに無担保で利用可能です。こちらも覚えておいて損はないテクニックと言えるでしょう。

【逓増定期保険加入の際の注意事項。】

逓増定期保険を契約する際に注意したいポイントは、解約返戻金返戻率のピーク期間が短いこと。つまり、ピンポイントで資金ニーズがわかっている場合以外には契約に適しません。仮に、経営者の退職金支払い時と、事業承継のタイミングがずれ込んでしまった場合には高額な税負担が想定されます。

これでは、事業保険の加入が単なる課税の繰り延べに過ぎません。保険加入時のプランニングが非常に重要と言えるでしょう。また、逓増定期保険における支払い保険料は非常に高額です。最低でも、解約返戻金受け取り時までの保険料支払い期間は安定的に収益を上げ続ける必要があります。事業保険は節税対策に妙味がある保険です。

そもそも利益が上がっていない状態では、事業保険契約の意味がありません。高額な支払い保険料が、キャッシュフローの悪化に繋がるケースもあるので、その点は注意が必要と言えるでしょう。

逓増定期保険の加入に際しては、リスクも伴いますが、非常にメリットの多い事業保険と言えるでしょう。詳しく学べば学ぶほどメリットの多い保険だと気付かれるはずです。基本的に逓増定期保険は万能薬。解約返戻金の受け取り方と、そのタイミングを間違えなければ、一つの保険で、あらゆるニーズに対応出来ます。

退職金準備から継続的な節税対策。後継者への事業承継の際の税額負担軽減。自社の資金計画に合わせ、適切な保険加入に努めましょう。一方で、これだけあるメリットをフルに享受することは非常に難易度が高いと言えます。保険の初心者では一人の知識だけでは、なかなか上手に使いこなせないでしょう。実際の保険契約時には、より高度な保険知識が要求されます。

数ある保険のなかからどのような保険を選び、どのような効果が得られるのか。逓増定期保険だけならまだしも、生活障害定期保険や、長期平準定期保険。さらには、終身保険や養老保険等様々な商品を総合的に勘案して加入保険を決定しなければなりません。

その他にも、全損タイプか半損タイプのどちらの加入が適切なのか等、保険契約の決定に際しては非常に高度な専門知識が要求されます。一度、ファイナンシャルプランナー等の専門家に指示を仰ぐことも良いでしょう。法人にとっては一大イベントである、事業保険契約。今後の経営戦略も考えながら、適切な保険加入に努めましょう。