税金対策に!法人税の退職金控除と役員報酬の活用

会社を経営している経営者、役員にとって、企業が支払う法人税は自分個人の税金と同様に、節税対策をとらなければならない対象です。

一生懸命経営努力をして、大幅に売上げを重ねると当然、課税も増えるのですが、その金額の多さに驚いてしまうこともあるでしょう。

また、納税したいがために資金繰りが厳しい状況になるケースも発生するかもしれません。

得た利益の分だけ納税することは、すべての企業に共通ですし、義務でもあります。国・行政のサービスを享受していることを考えれば、納税は重要です。

とは言え、税金を支払ったことによって、大切な会社の活動が制限されたり、継続できなくなってしまう事態は避けなければなりません。社会にも、会社にも、そこで働く従業員にも利益をうむ企業が公器であり、無理のない会社経営にもつながるのではないでしょうか。

そこで、今回は経営者の方の報酬や、退職金にフォーカスして、法人税を節税するための方法などをご紹介します。実行できるものがあれば、ぜひ取り入れてみてください。

○法人税の計算方法

節税方法に触れる前に、そもそも法人税がいくらかかるかについて、確認しておきましょう。といっても、法人税の計算自体は難しいものではありません。

・所得金額×法人税率

という計算で求めることができます。法人税は会社企業の収益に課せられるもの。各事業年度ごとの益金から、支出や損出など損金を減算して計算します。

法人税率は、年度によって移り変わりがあります。平成30年4月1日以降に開始される事業年度については、23.2%が基本税率として定められています。

ただし、資本金等が1億円以下の株式会社(中小法人)については、軽減税率の特例(所得800万円以下)があり、平成21年4月1日から平成24年3月31日の間に終了する各事業年度は18%、平成24年度4月1日前に開始し、同日以後に終了する事業年度は18%、平成24年4月1日から平成29年3月31日の間に開始する各事業年度は15%の適用を受けられます。

参考:法人税率の推移-財務省
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.htm

尚、法人税以外にも所得に対する課税があるので、見込んでおく必要があります。『法人都民税(法人県民税、法人市民税)』、『法人事業税』です。

○法人都民税の計算方法

つぎに、法人都民税の計算について確認します。法人都民税の税率は、平成28年度税制改正により地方税法が改正され、法人住民税について国税化の拡大に伴い、法人税割の税率の引き下げが行われることになりました。

東京都では、平成29年4月1日以後、開始される事業年度について、以下のとおり適用される予定となっています。

・23区内に事務所がある場合(超過税率)
現行:超過税率16.3%(道府県民税相当分4.2%+市町村民税相当分12.1%)
改正:超過税率10.4%(道府県民税相当分2.0%+市町村民税相当分8.4%)

・市町村に事務所がある場合(超過税率)
現行:4.2%
改正:2.0%

尚、資本金額(出資金額)が1億円以下で、法人税額1,000万円以下の法人は、標準税率で課税される不均一課税となっています。

・23区内に事務所がある場合(不均一課税適用法人の税率:標準税率)
現行:超過税率12.9%(道府県民税相当分3.2%+市町村民税相当分9.7%)
改正:超過税率7.0%(道府県民税相当分1.0%+市町村民税相当分6.0%)

・市町村に事務所がある場合(超過税率)
現行:3.2%
改正:1.0%

○法人事業税の計算方法

法人都民税と同様、法人事業税も改正予定です。法人事業税は、地方法人特別税の廃止に伴って、所得割、及び収入割の税率の引き上げが行われることになります。

東京都では、平成29年4月1日以後、開始される事業年度について改正後の税率が適用される予定で、以下は超過税率です。

・所得のうち年400万円以下の金額
現行:3.65%
改正:5.25%

・所得のうち年400万円を超え、800万円以下の金額
現行:5.465%
改正:7.665%

・所得のうち年800万円を超える所得、または軽減税率不適用法人
現行:7.18%
改正:10.08%

つぎに、資本金額(出資金額)が1億円以下で所得金額2,500万円以下の場合の税率です。

・所得のうち年400万円以下の金額
現行:3.4%
改正:5.0%

・所得のうち年400万円を超え、800万円以下の金額
現行:5.1%
改正:7.3%

・所得のうち年800万円を超える所得、または軽減税率不適用法人
現行:6.7%
改正:9.6%

したがって、実際に支払う税金は、『法人税+法人都民税+法人事業税』で求められます。

○役員報酬の活用による節税

企業の所得は、法人税等が課税されるわけですが、役員個人の収入には、所得税が課税されます。所得税法上では、役員の報酬であっても給与所得に分類され、所得税及び住民税がかかってきます。

では、法人税において役員の報酬はどのような役割を果たすのでしょうか。法人税法上、役員への収入はいくつかに分類されます。

・役員報酬
・役員賞与
・役員退職金

役員の報酬、退職金については、不当に高いケースをのぞいて、全額が損金として算入できるという特徴があります。つまり、役員へ報酬を支払うことで会社の利益を減らす効果がうまれ、法人税の節税につながるのです。

しかし、役員賞与は例外で、損金に経常できません。そもそも、『利益の分配』を目的としている役員賞与は、業績が良好なために行われる利益処分と判断されてしまいます。役員報酬は、業績にかかわらず、業務への対価として支払われるもの。すなわち、必要経費に認められるのですね。

では、実際に役員退職金による節税を考えてみましょう。

○役員退職金控除の活用による節税

企業が退職する役員に支給する役員退職金は、損金算入が認められています。しかし、多く支払われた役員退職金は、損金に計上できない制限が設けられています。とはいえ、過大とされた部分以外は退職金として損金に認められることもあります。

役員退職金として適正と認められる額については、特に法律で制限されているわけではありません。妥当と考えられている基準をもとに、算出していきます。

一般的によく用いられるのが、つぎの計算です。

・退職時の月額役員報酬 × 在任年数 × 功績倍率

功績倍率は、役員の地位などによって決定され、上位であればあるほど、高い値となります。

この役員退職金は、法人税のみならず、役員個人の所得税にとっても節税をもたらします。『退職金控除』という制度があり、以下の優遇を受けられます。

・退職所得控除後の金額から半分のみ課税所得金額になる(役員勤続期間が5年以下は除く)
・ほかの所得と別で所得税率が計算される(分離課税)

具体的な計算式を確認してみましょう。

・退職所得控除額の計算
( 1 )勤続年数20年以下のケース:40万円 × 勤続年数
※80万円に満たないときは、80万円とみなす。

( 2 )勤続年数20年以上のケース:800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
※( 1 )、( 2 )ともに勤続年数のうち、1年に満たない端数があれば1年とみなす。

・課税退職所得金額の計算
(退職金-退職所得控除額) × 1/2

・所得税額の計算
(課税退職所得金額 × 所得税率 - 控除額)× 復興特別所得税

・退職金の所得税の源泉徴収額の計算
( 1 )『退職所得の受給に関する申請書』を提出しているケース:
課税退職所得金額 × 所得税率 - 控除額 × 1.021

( 2 )『退職所得の受給に関する申請書』を提出していないケース:
課税退職所得金額 × 0.2042

国税庁:No.2732 退職手当等に対する源泉徴収

https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2732.htm
退職金の節税効果の高さはご理解頂けたでしょうか。しかし、税務で優遇されているからといって、額面を大きくするのではなく、経営者の方ご自身の報酬と、会社の利益、税務リスクなどをふまえて、相談してみましょう。