全額損金タイプの保険加入におけるメリットとは?生活障害保障型定期保険について詳しく解説

日本の法人実効税率は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国35カ国の中から見ても比較的高く、業績が好調で利益が出るほど、法人税納税額が増えてしまうという悩ましい問題が生じます。

そこでキャッシュフローを悪化させずに、節税効果を最大限いかす方法の一つとして、全額損金計上が可能な生命保険が注目されています。

生命保険を活用した場合、全額損金計上以外にも、支払保険料の1/2を損金計上とするタイプや、1/3を損金計上とするタイプ、1/4を損金計上するタイプなど様々なバリエーションがあります。

各損金タイプの中でも、全額損金計上タイプは非常に人気となっています。
全額損金計上タイプの中でも、シェアがある保険商品は生活障害保障型定期保険となります。

ここからは、全額損金計上タイプの保険における特徴と、生活障害保障型定期保険の解説をしていきます。
特徴を押さえて、ムダのない保険を選び、安定した企業運営を目指しましょう。

日本の実効税率は諸外国と比べて高め

法人税、法人住民税、法人事業税を合算した税率のことを法人税の実効税率と呼んでいます。
下図は、OECDに加盟する先進国の実効税率の比較表ですが、アメリカ、フランスに次ぐ、実効税率となっています。

平成25年度に37%だった法人税の実効税率は税制改正により、平成29年度では、29.97%と20%台となったことが話題になりました。
平成30年度は29.74%と微減となる予定です。

国としては今後も法人税は減税の方向にありますが、カナダ、中国、イタリアよりは高い税率が課せられています。

例)平成29年度決算 利益2,000万円の法人税

2000万円×29.97%=5,994,000円

実際の計算はこんな単純ではないのですが、約600万円の法人税が課せられることになります。

全額損金計上タイプの生命保険は入口の節税効果が抜群!

全額損金計上タイプの保険の魅力は、保険料支払時に節税効果です。

全額損金計上タイプは、読んで字の通り、支払保険料の全額を損金として扱うことができます。
利益に対し、生命保険料の全額を損金に計上することで、利益を減らすことができ、結果、法人税課税額を極限にまで抑えることが出来ます。

一方で、法人が加入する生命保険でも、逓増定期保険やがん保険では、1/2損金計上となり、保険料の半分だけが損金となり、残りの半分には法人税が課税されることになります。

全額損金計上タイプの生命保険においては、加入時から解約返戻金受け取りまでの、保険料支払時(入り口)のタイミングで節税の恩恵を受け続けることが可能となります。

保険料支払時の経理処理 (年払 10,000,000円)
借方貸方
保険料 10,000,000円現金・預金 10,000,000円

全額損金計上タイプなのに、お金がたまる生命保険がある!

生命保険は、お金がたまるタイプとお金のたまらない保険の2つのタイプがあります。

全額損金計上できる生命保険でも同様で、お金がたまらない保険だけではなく、お金がたまる保険もあります。

下図のように、保険開始時点では、解約返戻金はありませんが、徐々に積みたっていき、そのピークを迎えます。その後、保険が満期を迎える手前から解約返戻金は減っていき、満期の時点では解約返戻金がなくなります。

この形が全額損金計上タイプの基本的な形となります。

解約するタイミングを間違えると、解約返戻金がもらえなくなってしまうので、解約するタイミングには細心の注意が必要です。

また、解約した時の解約返戻金を受け取った際には、解約返戻金を雑収入として益金計上するという経理処理が必要となります。

解約返戻金受取時の経理処理(解約返戻金 5,100万円)
借方貸方
現預金 51,000,000円雑収入 51,000,000円

解約返戻金を受け取ったまま、何も対応をしなかった場合

生命保険を解約し、このまま決算を迎えると、解約返戻金による5,100万円の益金(利益)が発生します。

法人税 5,100万円×30%=1,530万円

何も対応をしないと、1,530万円の法人税を支払うことになってしまいます。
これでは、保険料支払時に節税した税金を、解約時にまとめて支払うことになってしまい、保険で節税した意味がなくなってしまいます。

そこで、出口対策をしっかり行うことで、解約返戻金に対する法人税も減らすことが可能となります。

生命保険の出口対策とは?

生命保険を解約すると解約返戻金という雑収入が計上され、利益を増やし、結果、法人税も増えてしまいます。

しかし、この雑収入分の経費を計上することで、利益は増えず、結果、法人税も増やすことなく、節税ができるというスキームになります。

    出口対策で使われる経費

  • 役員退職金
  • 従業員の退職金
  • 事務所・工場の修繕費
  • 事務所移転
  • 設備投資
  • 赤字の補填

出口対策例 大規模修繕

ここでは、工場の大規模修繕をする流れで見ていきたいと思います。

  1. 6年後に工場の大規模修繕を計画する
  2. 年間保険料 1,000万円の全額損金タイプの生命保険に加入する
  3. 6年後に生命保険を解約し、解約返戻金 5,100万円受け取る
  4. 大規模修繕として5,100万円の経費をかける

解約返戻金の益金を大規模修繕の損金で損益通算することで、±0となり、利益は増えません。
結果、②の入口で、毎年節税ができ、④で節税したお金を含めて、大きな経費をかけることができます。

出口対策例 銀行対策

また、全額損金計上して節税しながら、お金がたまる保険の別の使い方として、銀行対策があります。

経営の中では、取引先を失ってしまったり、自社が罹災にあったりなど、様々なことが想定されます。
このようなマイナスのイベントでは、赤字に転落することもあります。

赤字の状況下で、銀行から融資を受けようと思った場合、査定が厳しくなります。
最悪の場合、融資が受けられず、資金がショートしてしまうということも考えられます。

  1. 年間保険料 1,000万円の全額損金タイプの生命保険に加入する
  2. 3年後に大きな取引を失い、1,500万円の赤字が発生
  3. 1,500万円分の解約返戻金を受け取れるように、一部解約
  4. 結果、黒字決算となる

①の入口で、毎年節税ができます。③で赤字と解約返戻金を相殺し、黒字化することができました。
この対策は、当期の黒字化だけではなく、銀行との今後の取引も有利となります。

生命保険は経営戦略上、有利にできるツールとなります。

全額損金算入タイプの代表格!生活障害保障型定期保険とは

数年前までは、全額損金計上可能な保険は逓増定期保険、がん保険など各種あったのですが、税制改正を経て、1/2損金タイプや1/3損金タイプなど、経費にできる割合が減ってしまいました。

これから全額損金計上可能な生命保険を検討される方は、生活障害保障型定期保険を検討することも多いと思います。

最大の特徴は全額損金計上であること

数が少なくなってしまった全額損金計上が可能な生命保険ですが、生活障害型定期保険は全額損金計上が可能です。

これまでご紹介した出口対策などを実行に移すことができます。

保険会社によって、解約するタイミングや金額が異なります。
この表の解約返戻率とは、支払った保険料に対して、解約した場合にどのくらいの解約返戻金が戻ってくるかの割合になります。

A保険会社もB保険会社も年間保険料は約1000万円です。
A社では保険加入後6年、7年に解約返戻率のピーク(赤太字)を迎えます。
一方B社では保険加入後10年で解約返戻率のピークを迎えます。
またA社では80%を超える期間が長く3年目から11年目まで80%を超える期間があります。

保険商品を選択する際には、解約返戻率のピークの高さと期間の長さで選択することをオススメします。

生活障害型定期保険の解約返戻率

解約返戻率が高い保険

支払った保険料に対して、戻ってくる解約返戻金が多いので、費用対効果が高いということになります。
解約返戻率については、高ければ高い程よいということになります。

また、この表ではA社の方が有利となります。

解約返戻率の高い期間が長い保険

解約返戻率の高い期間が長いということも有利になります。

例えば、出口対策として役員退職金を支払うことを計画していることで考えたいと思います。

解約返戻金のピークである、6年目に代表取締役を退任し、後継者に引き継ぐ予定でした。
しかし、後継者に引き継ぎが上手く進んでいなかった場合など、役員の退任時期が5年ずれてしまったとします。
結果、11年目に代表取締役を退任し、後継者にその座を譲りました。

 A社B社
6年84.5%80.6%
11年82.2%79.6%

A社はピークは過ぎているものの、11年目でも80%を超えており、十分な解約返戻金を受け取ることができます。

節税効果を含めた実質返戻率とは

法人の生命保険の見積書を見ると、実質返戻率や参考返戻率という言葉が記載されています。
これは、節税効果を含めた解約返戻率という意味になります。

年間保険料 1,000万円
実効税率 33.8%
とすると、

節税額 1,000万円×33.8% = 338万円 となります。

保険料から節税分を差し引くと
実質保険料 1,000万-338万円 = 662万円
となります。

実質返戻率 = 解約返戻金/実質保険料

実質返戻率が100%だった場合には、保険に加入せず、そのまま法人税を納税した場合と同等となり、節税は出来なかったという意味になります。

生活障害型定期保険の解約返戻率が80%だった場合には、実質返戻率は120%程度となり、節税効果があったということになります。

生活障害型定期保険の保障内容とは

生活障害保障型定期保険とはどのような保険なのでしょうか。
保障内容を見ていきたいと思います。

  • 死亡したとき
  • 所定の高度障害状態になったとき
  • 所定の生活障害状態になったとき

生活障害状態という言葉が分かりづらい上に、各保険会社で考え方が異なっています。
加入する際には、確認してから加入しましょう。

以下に挙げたものはいくつかの保険会社の生活障害状態になりますので、参考にして下さい。

生活障害状態の例

  • 「歩行」の全部介助または一部介助の状態にくわえ、「衣服の着脱」「入浴」「食物の摂取」「排泄」のいずれか2つ以上が全部介助または一部介助の状態に該当したとき
  • 器質性認知証、かつ、意識障害のない状態において見当識障害があると診断確定されたとき
  • 初めて「転移性の悪性新生物(遠隔転移した悪性新生物)」に罹患したと医師によって診断確定されたとき
  • 急性心筋梗塞を発病したと医師によって診断され、7日以上継続して人工心肺を使用したとき、または心臓弁を人工弁に置換したとき
  • 脳卒中を発病し、それを原因として所定の要介護状態になり、その状態が90日間継続し、終身回復する見込みがないと医師より診断確定されたとき
  • 慢性腎不全になったと医師によって診断され、その治療を目的として医師の判断により永続的に行う人工透析を開始したとき
  • 肝性脳症を伴う肝硬変になったと医師により診断され、その治療を目的として肝移植を行ったとき

加入時に最低限抑えておきたいポイントは?まとめ

経営者から人気の高い、全額損金計上タイプの生命保険。
メリットばかりが取り上げられがちですが、解約返戻金の受け取り方、つまり出口対策をしっかり行わないと、入口で節税した分を出口で支払うという、単なる利益の繰り延べになってしまいます。

生命保険を経営ツールとして利用することで、利益のコントロールを可能にすることで財務基盤を盤石にし、また将来の大きな投資にも対応することができるようになります。
まだ加入していないという経営者の皆さんは、一度検討することをオススメします。