生命保険の全損と半損、どちらの商品を選ぶべきなのか??

社長
会社で生命保険に年間1,000万円も支払っているのに全く節税にならなかったよ!

法人税を節税しようとして、生命保険に加入して失敗してしまった例です。

生命保険に加入することで、節税することができるのですが、生命保険であれば何でも良いという訳ではありません。

また、ほとんどの生命保険は支払保険料の全額を損金計上できる全損商品か、支払い保険料の半分だけ損金計上できる半損商品のどちらかになります。
一方で、全額損金計上にならないこともあるので注意が必要です。

損金タイプの選び方、それぞれどのようなメリットがあるのかを検証してみたいと思います。

生命保険 保険料支払時の経理処理

法人が加入する生命保険は、保険商品などによって、経費として扱える割合が変わってきます。
経理処理では、支払保険料と、前払保険料の2つの言葉が登場します。

支払と前払という違いですが、全く性格が異なっており、支払保険料は損益計算書の経費に計上し、前払保険料は貸借対照表の資産に計上します。

経費にできるのは、支払保険料だけとなります。

経理処理該当商品
全額損金(全損)生活障害定期保険、35才までの逓増定期保険
1/2損金(半損)逓増定期保険、長期平準定期保険、がん保険、養老保険
1/3損金逓増定期保険
1/4損金逓増定期保険、長期傷害保険
全額資産計上(損金にならない)終身保険

例として、保険料1,200を支払った場合の、経理処理を確認したいと思います。

全損(全額損金)

支払った保険料を全額経費とすることができます。
全額を損金に計上することから、全損とも呼ばれます。

全額損金 保険料支払時の経理処理
支払保険料 1,200 / 現預金 1,200

半損(1/2損金)

支払った保険料の半分を経費とすることができます。
半分を損金に計上することから、半損とも呼ばれます。
残りの半分は前払保険料という資産の課目に仕訳します。

1/2損金 保険料支払時の経理処理
支払保険料 600   / 現預金 1,200
前払保険料 600

1/3損金

支払った保険料の1/3を経費とすることができます。
残りの2/3は前払保険料という課目に仕訳します。

1/3損金 保険料支払時の経理処理
支払保険料 400   / 現預金 1,200
前払保険料 800

1/4損金

支払った保険料の1/4を経費とすることができます。
残りの3/4は前払保険料という課目に仕訳します。

1/4損金 保険料支払時の経理処理
支払保険料 300   / 現預金 1,200
前払保険料 900

全額資産計上

経費として扱うことはできません。
全額、前払保険料という資産に計上します。

全額資産計上 保険料支払時の経理処理
前払保険料 1,200 / 現預金 1,200

保険商品によって経理処理が全く異なり、経費にできる割合が異なってきます。
節税対策・決算対策をメインに考えるのであれば、支払保険料の全額を経費に計上できる、全額損金タイプが最も効果が高くなります。

トラブル例

社長
会社で生命保険に年間1,000万円も支払っているのに全く節税にならなかったよ!

最初にご紹介したこの例は、全額資産計上され、1円も経費として扱うことができない、終身保険に加入していた場合のトラブルとなります。

全額資産計上 保険料支払時の経理処理
前払保険料 10,000,000円 / 現預金 10,000,000円

法人で生命保険に加入していれば、必ず節税できる訳ではありませんので、注意して下さい。

生命保険 解約返戻金受取時の経理処理

法人向けの生命保険商品を使うと、節税の対策を取りながら、お金をためられることにメリットがあります。
たまっているお金は解約することで、解約返戻金という形で受け取ることができます。

解約返戻金は経理上、雑収入となります。
解約返戻金を全額、雑収入として計上するわけではなく、以下の計算を行います。

雑収入の計算方法
雑収入=解約返戻金-前払保険料

全損タイプ 解約時の雑収入計算方法

例)全損タイプの保険(生活障害型定期保険)に加入し、解約返戻率が最も高い、5年目に保険を解約した場合

16,727,800円(5年目の解約返戻金)- 0円(前払保険料)= 16,727,800円(雑収入)
※前払保険料は資産計上されます。

現預金 16,727,800円 / 雑収入 16,727,800円

全損タイプの場合には、解約返戻金の全額が雑収入として計上することになり、5年目の利益を増やしてしまうことになります。

経過年数年間保険料累計損金計上額累計資産計上額累計解約返戻金解約返戻率
1年目4,188,0584,188,0580
2,540,20060.6%
2年目8,376,1168,376,11606,108,60072.9%
3年目12,564,17412,564,17409,662,60076.9%
4年目16,752,23216,752,232013,202,80078.8%
5年目20,940,29020,940,290016,727,80079.8%
6年目25,128,34825,128,348020,014,20079.6%
7年目29,316,40629,316,406023,267,10079.3%
8年目33,504,46433,504,464026,486,30079.0%
9年目37,692,52237,692,522029,671,10078.7%
10年目41,880,58041,880,580032,819,10078.3%
11年目46,068,63846,068,638035,234,10076.4%

半損タイプ 解約時の雑収入計算方法

例)半損タイプの保険(逓増定期保険)に加入し、解約返戻率が最も高い、5年目に保険を解約した場合

19,494,660(5年目の解約返戻金)-10,459,370円(前払保険料)=9,352,290円(雑収入)

現預金 19,494,660円 / 雑収入 9,352,290円
            前払保険料 10,459,370円

半損タイプの場合には、支払保険料の半分が前払保険料となるため、全損と比べ、5年目の利益は全損タイプとくらべ半減されます。

経過年数年間保険料累計損金計上額累計資産計上額累計解約返戻金解約返戻率
1年目4,183,7482,091,8742,091,87400%
2年目8,367,4964,183,7484,183,748321,1203.84%
3年目12,551,2446,275,6226,275,6221,057,0208.42%
4年目16,734,9928,367,4968,367,4962,207,70013.19%
5年目20,918,74010,459,37010,459,37019,494,66093.19%
6年目25,102,48812,551,24412,551,24423,249,98092.62%
7年目29,286,23614,643,11814,643,11826,791,22091.48%
8年目33,469,98416,734,99216,734,99229,864,16089.23%
9年目37,653,73218,826,86618,826,86632,085,24085.21%
10年目41,837,48020,918,74020,918,74034,154,68081.64%
11年目46,021,22823,010,61423,010,61436,050,18078.33%

経理処理の観点からは、保険料支払時と、解約返戻金受取時が違いの全てになります。

全損と半損の解約返戻金

全損タイプの保険も、半損タイプの保険も、節税しながらにして、解約返戻金というお金がたまることに意味があります。

全損タイプ、半損タイプともに解約返戻率が最も高い5年目で見比べてみたいと思います。
尚、節税効果を計算する上で、法人税の実効税率を33.8%として計算しています。

全損タイプの解約返戻金

経過年数年間保険料累計損金計上額累計資産計上額累計解約返戻金解約返戻率実質解約返戻率
5年目20,940,29020,940,290016,727,80079.8%120.66%

半損タイプの解約返戻金

経過年数年間保険料累計損金計上額累計資産計上額累計解約返戻金解約返戻率実質解約返戻率
5年目20,918,74010,459,37010,459,37019,494,66093.19%112.14%

解約返戻率(お金のたまり率)を比べると、全損タイプでは79.8%ですが、半損タイプでは93.19%と10%以上高く、節税効果を無視すれば、半損の方が有利となります。

一方で、節税効果を考慮した解約返戻率を実質解約返戻率実質返戻率と呼びます。
実質返戻率では、全損タイプが120.66%、半損タイプが112.14%となり、全損タイプの方が有利となります。

全損・半損のメリット

全損にしても、半損にしても、損金計上割合の違いや、解約返戻率の違いはありますが、節税をしながらにして、お金をためられるという目的は同じだと思います。

このような保険は、実際にどのように使われているのでしょうか?

役員退職金の積み立て

解約返戻金はさまざまな資金の原資に活用することができます。

たとえば、役員の退職金に利用することができます。
解約返戻金が支払われると、会社には雑収入という益金が計上されます。
雑収入は法人税の課税対象となりますが、役員の方に退職金として支払うことで、雑収入の利益を減らすことができ、解約返戻金受取時の法人税の課税を減らすことができます。

大規模な修繕費

解約返戻金を事業のための設備投資や、大掛かりな修繕費に活用する方法があります。
役員退職金同様、解約返戻金は雑収入となりますが、修繕費として支払うことで、雑収入の利益を減らすことができるため、結果的に法人税を減らすことができます。

自社株対策

事業継承時の相続税負担を減らすためにも有効となります。
中小企業オーナーの財産は、現預金、自社株、不動産などに分かれますが、このうち、自社株でトラブルになることが多くあります。

現社長に突然の相続が発生して、後継者が経営権を獲得するために、自社株を相続することになりますが、自社株があまりに高すぎて払えないというケースがあります。
中小企業は大企業と異なり、非公開株式となっているため、株価がいくらか分かりません。

詳細な計算方法は改めてご紹介しますが、中小企業の株価は利益を減らすことで、株価を減らすことができます。
自社株の評価額が下がれば、必然的に相続税の負担額も減ってきます。
そのことがスムーズな事業継承を可能にするのです。

自社株対策のために、生命保険を活用することが最近では増えています。

役員退職金、大規模修繕、自社株対策などのどの場合でも、解約返戻金を受け取った後の出口戦略まで考えておくことが重要なポイントとなります。

全損・半損 どちらを選べば良いか?

ここまで、経理処理、解約返戻金やその使い方についてご紹介しましたが、結果、どちらが良いかということを考える上で、入口と出口という2つがポイントになります。

  1. 入口 キャッシュは潤沢か?
  2. 出口 出口対策はあるか?

全損と半損の入口 キャッシュは潤沢か?

決算期を迎え、利益が出ている場合には、どれだけの金額を節税するかに注目が集まりますが、キャッシュを考えることも重要です。

1,000万円を損金として節税したいと考えた場合、それぞれの保険でのキャッシュはいくら必要になるのでしょうか?

  • 全損タイプ・・・キャッシュ 1,000万円
  • 半損タイプ・・・キャッシュ 2,000万円

半損は全損の2倍のキャッシュを使うことになります。

キャッシュが潤沢であれば、半損タイプを使用し、解約返戻率の高さを求めることも良いかと思いますが、キャッシュアウトを増やしたくないという場合には、全損タイプで節税効果を求めることも良いかと思います。

全損と半損の出口 出口対策はあるか?

解約返戻金を受け取る際に、出口対策を何もしていないと、解約返戻金は雑収入という形で法人税の課税対象となります。

雑収入の計算上、全損タイプでは、前払保険料がないことから、半損タイプより大掛かりな出口対策が必要となります。

出口対策は雑収入という利益に対して、どのような経費を使い、解約時当期の法人税を減らすかという単純な話でもあります。
しっかりとした計画で考えられていれば、全損タイプでも半損タイプでも問題ありません。

どちらを選択する場合でも、資金繰りを悪化させてまで行う対策ではないので、計画的に利用することが重要です。

全損・半損 まとめ

法人向けの生命保険商品の検討段階で抑えておくべきポイントは、個人向けの生命保険商品に比べて、支払保険料が非常に高額という点です。

節税に効果があり、資産形成に効力があると言っても、そもそもキャッシュがないと保険料を支払うことも困難になってしまいます。

全額損金の生命保険と半額損金の生命保険の比較・検討はもちろん、将来的な資金繰りや資金ニーズを把握しておくことをオススメします。
節税ありきではなく、今後の資金計画、資産形成、さらに経営戦略の策定のツールとして生命保険を活用してみて下さい。

会社自体が進むべき道を見定め、方針を決め、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、各々の保険商品の特性・細かいポイントを含めて加入の検討を行うのが得策ではないでしょうか。
御社にとって適切な保険契約を締結し、そのメリットを最大限有効活用してください。