全損と半損。法人加入の生命保険はどちらがお得!?経営者なら知っておきたい基礎知識

我が国の法人税は海外諸国から見ても高水準。経営者のみなさまは節税対策に躍起になっていることでしょう。それは、最近話題になった「パナマ文書」問題を見れば一目瞭然です。アップルやグーグルが租税回避地でペーパーカンパニーを設立していたニュースが全世界を駆け巡りました。儲かれば儲かるほど、その納税額も膨れ上がります。

租税回避に関しては、法令違反ではありませんが、その在り方は非常にグレー。今回のような事態になりかねません。やはり節税は、法が認める範囲で正々堂々と行う必要があります。現状の法制度で、節税対策を行うには事業保険の活用が最適でしょう。事業保険契約を締結すると、毎年支払った保険料はその一部、または全額を損金に算入することが出来ます。

単なる節税のみならず、手元に残るキャッシュの最大化を図ることが出来るのです。事業保険を活用することで、単純に銀行預金を積み上げるよりも、手元に残るキャッシュが多くなることが想定されます。では、具体的には全損、半損どちらの保険契約を結ぶべきなのでしょうか。ここからは、事業保険契約における基礎知識の確認、また、全損、半損それぞれの特徴を加味しながら、最適な保険契約を考えていきます。

【節税だけじゃない。事業保険活用におけるメリット】

事業保険の大命題は節税を行い、手元に残るキャッシュを増やすことです。支払い保険料を損金に算入することで、法に基づき租税を回避します。こちらに関しては、上述した通りで、異論はないでしょう。しかし、事業保険契約におけるメリットはこの限りではありません。例えば、将来必要になることが予想される修繕費や設備投資費。経営者の退職金しかり。将来の資金準備という側面も非常に強く持っています。

このように、あらかじめ契約している保険の出口を設定しておけば、保険料受け取り時の税負担も軽減出来ます。具体的には、事業保険契約時に経営者の勇退資金として支払い保険料を積み立てます。そして、勇退のタイミングで解約返戻金を退職金として受け取ります。基本的には、解約返戻金は益金として算入されますが、退職金として受け取ることで損益通算出来る訳です。よって、入り口のみならず出口の税負担軽減も行うことができるのです。

これは法人におけるキャッシュを最大化する観点から見て非常に有効と言えるでしょう。また、事業承継時の税額負担軽減にも有効活用出来ます。自社株の評価額はその額が高ければ高いほど、事業承継時に高額の自己負担を強いられます。支払い保険料を損金に算入することで、わざと法人の利益を圧縮します。これにより、自社株の評価額を下げるのです。よって、事業承継時の自己負担が軽減されます。

【全損保険と半損保険の特徴比較。】

全額損金計上出来る事業保険のラインナップは年々少なくなっています。以前は、法人加入のがん保険も全損商品の代表格でしたが、法改正により、現在は全損タイプのがん保険はありません。これから全損タイプの保険への加入を検討されるみなさんは、ほとんどの方が生活障害保障型定期保険に加入することになるでしょう。全額損金タイプの保険の特徴としては、解約金の返戻率が低いことが上げられます。しかし、実質返戻率は100%を超える期間が長くなります。解約返戻金を必要なタイミングで、必要な経費に充当すれば、現金・預金で積み立てた場合よりも、より多くのキャッシュを会社に残せることになります。

また、解約返戻金のピークが比較的長いことも全損保険における特徴のひとつと言えるでしょう。これにより、解約返戻金の予定使用時期にずれが生じた場合でも、税負担のリスクは少なくなることが想定されます。とにかく、事業保険は解約返戻金の受け取り方が肝。返戻金の単純受け取りをしてしまうと、その額が益金算入され、課税対象になってしまいます。つまり、事業保険への加入が単なる税金の繰り延べに過ぎなくなってしまうのです。特に、全損タイプの事業保険については入り口の税額軽減効果が大きい分、出口でその反動が出やすくなっています。全損タイプの保険契約時には、出口戦略に細心の注意を払う必要があると言えます。

次に、半損タイプ事業保険の特徴を見て行きます。逓増定期保険等に代表される半額損金保険への加入メリットは主に二点。一点目は、解約返戻率のピークが高いこと。全損タイプの保険では、どんなに返戻率が良くてもそのパーセンテージは85%程度。対して、全額損金タイプの保険のほとんどで返戻率は100%に近くなります。次に、出口の税負担が全損タイプに比べて軽減されることが挙げられます。実際に保険料支払い時には、半額が損金で、残りの部分は資産計上になります。即ち、損金算入出来ない部分は課税対象になる訳です。あらかじめ、税額負担を強いられる分、受け取る返戻金の課税対象も半額になります。逆に言えば、入口の税負担は多くなります。こちらはデメリットと言えるでしょう。いずれにせよ、メリットとデメリットは表裏一体。自社の経営状況に合わせながら判断をして行く必要があるでしょう。

【事業保険の保険料は高額。会社の財務状況に合わせてタイプを選ぶ。】

逓増定期保険、法人がん保険、生活障害保障型定期保険。これらに代表される事業保険の支払い保険料は非常に高額です。支払い保険料の利益部分を損金に算入する訳ですから、そもそも利益が出ていない企業は保険に加入する意味すらありません。よって、事業保険加入に際しては自社の財務状況が非常に重要になってきます。ある程度、経営上の資金に余裕がある場合は半額損金タイプ、手元のキャッシュがそれほどない場合は全額損金タイプとの認識で問題ないでしょう。いずれの保険契約を結ぶにせよ、解約返戻金の受け取り方、つまり、出口における戦略は非常に重要になってきます。繰り返しますが、その点は必ず注意するようにしましょう。

個人で加入する保険とは異なり、法人契約の事業保険の仕組みは非常に複雑です。退職金準備や事業承継時の対策、あるいは役職員に向けた福利厚生の充実。その目的や活用法次第では、利用する保険の種類も異なります。もちろん、全額損金と半額損金の別も重要ですが、それ以上に加入する保険の種類が重要になるケースもあります。また、その種類によっては、加入年齢によって解約返戻金の返戻率も異なります。将来のキャッシュポジションを最大化するためにも、早めの加入で準備を行うことが非常に重要です。全損、半損の使い分け。

あるいは、パターン別各種保険の使い分け方法。細かい点については、ファイナンシャルプランナー等の専門家の指示を仰ぐことが得策でしょう。いきなり保険会社の営業マンに見積もり依頼をすると、私情を挟まれ、適切な保険契約が締結出来ない場合もあります。また、専門家に相談するにしても、最低限の基礎知識がなければ、担当者の言いなりで正しい判断を下せないこともあります。まずは、自身で事業保険に関する最低限の知識を習得する。そして、自社の経営状況を鑑みて、今後のキャッシュフロー、資金ニーズを把握する。その上で、専門家に相談すれば今後の資金計画に対する議論もスムーズに進むでしょう。いずれにせよ、事業保険契約に際し、最低限の基礎知識は必要不可欠です。上記内容を把握し、適切な保険加入に努めましょう。